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(2)「水抜き」「Color Change」焙煎についての言葉を整理して考えてみよう

「水抜き」とは焙煎初期に生豆の水分を蒸発させ、乾燥させることを指します。またはその段階のこと。英語ではDrying Stageと言います。水抜きが終了した時点の温度・時間をDry End Pointとも呼びます。

私は、この「水抜き」という言葉にとても違和感があります。なぜなら私の焙煎の極意は「水分を飛ばさない」ことにあるからです。その理由は後述するとして、スペシャルティコーヒーのみを対象とするす私の焙煎に置いて「水抜き」という言葉・作業は必要ありません。。

そもそもなぜ「水抜き」という言葉が・作業が必要だったのでしょうか?その理由はなんなのでしょう?

私の理解では、コーヒー豆の時代背景と関係していると考えられます。

現在のように流通が発達していない時代は、農園レベルで単一品種の品質の均質なコーヒーを入手することは非常に困難でした。多くはトレーサビリティのない状態で生産国名+グレード等級の名称でしか入手できなかったのです。一つの麻袋の中に様々な農園から取れた生豆が混在していても不思議ではありません。当時の品質の目安であったグレード等級は、欠点豆の混入率や豆の粒径の大きさや、取れた農園の標高などで決められるものでした。「美味しいかどうか」は基準ではなかったのです。また日本においてはある時代にコーヒー輸入量の総量規制がなされていたこともあって、高品質であっても小ロットのコーヒーは輸入しずらかったということもありました。さらに当時の生豆の多くは麻袋に梱包されて、なおかつ船便で輸送されていたこともあり、水分量のコントロールはほとんどされていない状態でした。

いずれにせよ、(スペシャルティグレードに比べ)品質が均質でない生豆を使用せざるを得ない状態で、いかに美味しくコーヒーを焙煎するかというのが、スペシャルティ以前の考え方だったのではないでしょうか。その解決策の一つが「水抜き」です。焙煎の初期段階で時間をかけてゆっくり加熱し、水分を蒸発させる、というよりは豆を乾燥させることによって、たとえ不均質な水分量の豆であっても均質化することができます。水分量が均質な豆は焙煎も容易で、焙煎ムラもなく、美味しいコーヒーになります。

同じ理由で、ヴィンテージコーヒーという考え方もあるのかな、と思います。適切に長期間保存すればするほど、水分量は一定化できますから。「ニュークロップとオールドクロップのどちらが美味しい?」という議論が20年ほど前に昔なされたことを思い出します。今思えばそれも同じ根拠だったのでしょう。

時代が変わり、輸送や生産技術の向上のため、ひいては「美味しさ」を基準とした評価制度が確立されたことから、現在ではスペシャルティグレードの高品質で単独品種・単独農園のものが入手できるようになりました。はじめから均質な状態であるため、水分を飛ばした状態で焙煎する必要性はなくなったのです。多くのスペシャルティコーヒーは水分量を一定にコントロールした状態で、Grain Proと呼ばれる分厚いビニール袋の包装や真空パックの状態で出荷しています。その他一部ではありますが、船での輸送時もリーファーコンテナと呼ばれる温度管理ができるコンテナを使用するなど、生豆の品質を維持する努力がなされています。

したがって、スペシャルティグレードの生豆のみを対象とする私の焙煎においては「水抜き」は行いません。ただし「Color Change」という言葉に置き換えて、同じように使用しています。

では「Color Change」とは何か?

たいていの生豆は最初は緑色をしています。熱を加える(焙煎する)と徐々に色が薄くなり、黄色になり、褐色になり、茶色になり、最後は黒くなります。その「黄色」になったタイミングを「Color Change」と呼びます。(少なくとも私の場合は)

豆の色が変わるということは、豆の内部でなんらかの化学的な変化が起きている証拠です。おそらくはメイラード反応で、詳しくは後述しますが、ここでは有機物の複雑な集合体であるコーヒー豆になんらかの化学変化が起きたであろうタイミングが「Color Change」と定義します。(ここでは、水の蒸発=乾燥のことを化学変化とは考えていません)しかし、色の変化は遷移的なものですから「ここだ!!ジャストポイント!!」という訳にはいきません。「概ねこの辺だろう」という状態に区切りをつけて判断する訳ですが、その時々の判断ではブレにつながるので、私の場合は豆温度で148℃をColor Change Point (CCP)と固定して判断しています。

さて、考え方を逆にすると、Color Changeの前の段階は、化学変化の生じる前段階です。その段階で生じている事象は、水分の蒸発と、熱の伝達・カロリーの蓄積でしょうか。

話を前回の「中点」の話に戻しましょう。

「中点」の固定は非常に難しいことですが、固定できないと焙煎のコントロールが困難で、味覚の再現性に問題を生じます。でも、「Color Change」のポイント、つまり化学変化の生じるタイミング(温度・時間)が固定できたら、その前段階にブレがあっても問題ないのではないでしょうか?私の場合CCPの温度を148℃にしてますから、その時の時間だけを揃えれば良いということになります。

いかがですか、このアイディア?オージーザス!!光明がさすとはこのことです。中点なんか気にしなくてもいい!!これまでの苦労は過去のものになるのです!!

でも、本当でしょうか?自問自答・・・

「Color Changeの前段階で生じている事象は、水分の蒸発と熱の伝達・カロリーの蓄積」と前述しました。そう、「熱の伝達・カロリーの蓄積」こそが非常に重要な考え方なのです!!それについてはまた今度。

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