TOP » (4)「水分」焙煎についての言葉を整理して考えてみよう

KURIYA COFFEE ROASTERS BLOG

(4)「水分」焙煎についての言葉を整理して考えてみよう

スペシャルティコーヒーにおいて、生豆の水分量が均質であることは非常に重要です。コーヒー豆の生産・保管・輸送する各段階においては、豆の水分量を一定に整え、変化しないよう留意しているはずです。もちろん焙煎家としては生豆の水分量に変化が生じないような保管方法を心がけるべきです。

また、(3)の項で豆の中心部まで熱を届けるためには、焙煎初期に強い熱量を加える必要があることを述べました。また、私の焙煎においては、豆の水分を飛ばさないように焙煎するのが極意でもあります。ここでは、豆の水分の重要性とその理解によるカップへの影響を述べたいと思います。

なお、コーヒー豆の水分量とは、細胞内にH2Oとして存在する自由水のことを指します。ここでの議論において、有機質の分子からの熱分解、もしくは化学反応によって発生するH2Oは対象としていません。

 

焙煎の初期に強い熱量を与え、豆の中心部まで熱を伝達するためには、実はH2Oの存在が重要です。豆の内部の自由水は最良の熱の伝達物質なのです。そのため、水分を保持したまま熱量を加える作業が必要となります。

そのためには、ダンパーを閉じて空気を閉じ込め、蒸し焼き状態にすることによって、豆の乾燥を防ぎます。また、時間をかけるとその分乾燥が進むので、出来るだけ短時間で加熱することも必要です。端的にまとめると【焙煎初期は、ダンパーを閉じ、可能な限り強い火力で熱量を加える】わけです。このことで、豆の中心部まで熱が伝わり、中心部の生焼け状態を防ぐことができます。

もうひとつ水分の保持には重要な役割があります。それは「甘さ」です。

コーヒーの甘さの元になるのは、ショ糖という成分です。糖は熱によりカラメルとなり分解します。この反応をカラメル化反応と言います。カラメル化により、糖は分解され、焦げたような色合いがつき、苦味が生まれます。深煎りコーヒーの黒さと苦味はカラメル化現象が大きく寄与しています。スペシャルティコーヒーの浅煎りを目指す場合は、出来るだけカラメル化をさせないで甘みを保持することで、フルーティな風味を生かすことができます。

カラメル化反応は、糖の熱分解反応ですが、そこにH2Oが介在することによって、加水分解し、反応のタイミングが遅くなります。簡単にいうと、水があればカラメル化しにくくなります。つまり糖が分解されにくいので甘くなります。

甘く、フルーティなコーヒーのためには、生豆の水分を可能な限り保持した焙煎が必要なのです。

(2)「水抜き」「Color Change」の項でも述べましたが、上記の意味でも「水抜き」という呼び方は不適当です。Drying StageやDry Endという呼び名も現代のスペシャルティコーヒーの焙煎においては、ふさわしくありません。

「水抜き」という工程、もしくは呼び名は、コモディティなコーヒー豆の深煎り焙煎のためにあるのではないでしょうか?

 

<焙煎初期に水抜きをしない>というのは、焙煎理論の大変革だと思います。この革新的な焙煎方法に移行することは、過去の理論ややり方を捨て去ることでもあるので、抵抗のある方も多いのではないでしょうか?

焙煎に関する日本語の書物の多くにも「水抜き」のことは書かれてますが、個人的にはそのような書籍はむしろ読まない方が良いと思います。もし教科書が必要ならば、Scott Raoの「The Coffee Roaster’s Companion」がオススメです。


[COFFEE


pagetop