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KURIYA COFFEE ROASTERS BLOG

(3)「カロリー」焙煎についての言葉を整理して考える

「カロリー」とは「熱量」のこと。単位はCalとかJ(ジュール)ですが、それに触れるつもりは全くないです。ちょっと数学的な話をしますが、あくまで概念的な話ですので、苦手な人でもきっと理解できると思います。

焙煎することを前提に、縦軸に温度、横軸に時間をとった二次元のグラフ(下図を参照)を想像してください。縦軸の温度とは、豆の温度のことになります。描かれる曲線は、豆の温度が時間とともにどのように変化したかを表します。ここで、t=0は豆を投入した時間、T0は投入した時点での生豆の温度、CCPは前述したColor Change Point(Dry End Point)です。

直線で描かれている曲線は初期に強い火力を与えた場合の、点線で描かれている曲線は比較的弱い火力だった場合のそれぞれの温度変化を概念的に表しています。そしてCCPの時間が両者とも同じ場合を仮定してます。

カロリーの概念

先に「中点は気にしなくてもいい!CCPだけを揃えれば良いのだ!」という仮定を述べましたが、その検証のための図です。ちなみに上の図は(実際には測定できない)豆の温度を理想的に記載してるので中点というものは存在しません。

T0を基準に描いたグラフの面積(着色部)が、豆に与えた熱量、つまり「カロリー」となります。

火力の与え方を変えた二つのグラフで、より大きな熱量が加えられたのはどちらでしょう?そう、初期に火力を与えた方が高いですね。ここでわかるのは、たとえCCPが一緒でも火力の与え方でカロリーに差が出るということです。

与えられたカロリーはどこに行ったのでしょう?Color Changeの前段階では、科学的な変化が起きていない状況です。一つは、豆の温度上昇に費やされたことが挙げられます。またそれに伴い水分の蒸発にも費やされたのかもしれません。可能性としてはこの二つです。

先に、スペシャルティコーヒーのみを対象とする私の焙煎では、豆の水分の蒸発させないようにするのが極意と書きました。その理由はまた後述しますが、とりあえず、できるだけ豆を乾燥さえない方法があると仮定して考えましょう。つまりカロリーが豆の水分蒸発に使用されないとすると、豆の温度上昇に使われたことになります。では、上記のグラフの面積の差は具体的にはどこに費やされたのでしょうか?

焙煎機に付属している豆温度計は、棒のような形をしている熱電対センサーであることは前述しました。実際は熱電対センサーに豆が接触・衝突して豆の温度を測定しているということです。つまり豆温度計が測定しているのは、コーヒー豆の”表面温度”を図っているという理解が重要です。

生豆を焙煎機に投入した直後では、豆の表面温度と芯の部分の温度には差があると考えられます。そのままの状態で焙煎を続ければ、最悪の場合、芯の部分が生焼けの状態、お米でいえば”めっこまんま”の状態になりかねません。そこまではならないとしても、温度条件が異なれば、熱による化学変化で生成される化学物質も異なってくることは自明です。一つのコーヒー豆の断面の中で不均質な化学変化が生じることは、おそらく風味に悪い影響をもたらすと私は考えています。根拠はまだありませんが、特に”酸味”の美しさに影響があると思っています。

一つのコーヒー豆の断面の中で、均質な温度条件にすることが、そのあと続く化学変化(メイラード反応)を均質に発生させることにつながります。そのためには豆の中心まで熱を伝達することが肝要です。

グラフの話に戻りましょう。実線のグラフと点線のグラフが描く面積の差分は、豆の中心に蓄熱されたと考えると矛盾なく説明できます。つまり、初期に熱量を多く与えた方が、豆の断面においても均質に加熱されているといえそうです。その方がきっと美味しいコーヒー焙煎になるといえそうです。

したがって前回の「水抜き」「Color Change」の項の最後に記した問題点「CCPさえ揃えれば中点を無視できる」というのは、間違いということになります。生豆投入から中点を経由してCCPに至るまでの経路が異なれば風味に影響を及ぼすのですから、結局のところ、中点の位置を揃えることもやはり重要であるといえます。

焙煎家の苦労は終わることがなさそうです。


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