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(8)「BTs」「BTi」焙煎に関する言葉を整理して考える

豆温度(BT)は、焙煎機の豆温度計によって測定される温度のことです。すでに前述しましたが、BTは棒状の熱電対センサーに衝突したコーヒー豆の温度を測定して表示しています。また焙煎初期段階(センサーと豆温度が平衡状態になる前)においては、豆温度を正確に表示されていないため、注意が必要です。中点も平衡になる過程の時点なので、その温度に化学的意味はありません。平衡状態になってからの数値を本当のBTと理解する必要があります。

さて、BTを理解するには、もうひとつ重要な概念があります。

「測定される豆温度(BT)は、豆の表面温度である」

棒状の熱電対センサーにぶつかった豆の温度はあくまで豆の表面しか接触してないので、当然のことです。しかし豆の内部温度と表面温度は違います。これ以降便宜的に豆の表面温度をBTs (s : surface)、豆の内部温度をBTi (i : inner ) と呼ぶことにしましょう。したがって、これまでBTと呼んでいたものは、実際にはBTsということになります。

BTsは豆温度計では計れますが、BTiは測定不能です。

またBTsは常にBTiより温度が高い、つまり [ BTs ≧ BTi ] の関係が成り立ちます。

BTs >>>  BTi  の場合:豆の内部まで十分に熱が届いていない状態りであり、いわゆる生焼け・芯残り・メッコマンマ状態です。青臭さや生臭さ干し草っぽさの原因となります。
BTs = BTi  の場合:芯まで均質に焼けているとはいえ、風味は単調で立体感のないものになりがちです。
それゆえ、適度な「 BTs > BTi 」を見つけることが重要と考えています。しかし、そのコントロールはなかなかの難題です。

まず、BTs >>>  BTiの場合を避けるためには、焙煎初期に与える熱量が十分でなければなりません。また生豆中の自由水(H2O)が飛ばない(乾燥させない)ように留意する必要があります(具体的には短時間焙煎とダンパーのクローズかな?)。なぜなら豆の中心部まで熱を伝達するためには、最良の熱伝達物質である自由水の存在が不可欠だからです。

また、十分な熱量を与えるために重要なのは、十分な暖気と、適度なバッチ量です。焙煎機の暖気が不十分だと(特に焙煎初期において)生豆に十分な熱量を与えることができません。また、バッチ量が多すぎると同じ理由でよくありません。私の焙煎機はDiedrich IR2.5 (2.5kg釜)ですが、(今の所の)バッチ量は850gです。それより多いと十分な熱量を与えられないと考えています。この辺は焙煎機の種類・構造によって異なるはずです。

また、もうひとつ重要なのは、投入温度です。投入温度が高ければ初期に与える熱量は上がるはずですが、ここに関しては私もまだ十分な検証が終わっていない段階ですが、投入温度を10℃高くするだけで、焙煎初期のBTおよびΔBTのグラフの形状はかなり変化します。初期に熱量を与えたい場合は、ぜひ検討するべき項目です。
以上が理論的なところ。以下に実際に私が経験した焙煎の事例を紹介します。
<バッチ量の違い>
通常1バッチ850gで行なっているところ、諸般の理由で1300gで焙煎することになりました。投入温度やガスの火力の調整で、通常のプロファイルをほぼ正確になぞることに成功しました。ところが、1ハゼのタイミングが全く違います。1300gの方がはぜるのが遅くなりました。結局、豆の色やフレイバー、そしてDTRを判断基準にして、ほぼ同程度の焙煎度と思われる時点でDropしました。結果的にAUCは1300gの方が大きくなりました。しかし、そのカップの違いは明らかで、1300gの方が、干し草臭が強く、明らかに生焼け状態でした。単純に考えレバ、AUCが大きい方が与えた熱量が多いので深煎りということになりますが、実際はそうではありません。
上記のことが示すのは次の事柄です。
・バッチ量が多いと十分な熱量が与えられないため、豆の内部まで熱量が届かない。
・1ハゼは、豆内部の水分の蒸発に伴う内圧の上昇によって発生する。1ハゼが遅れたということは、豆の内部温度の上昇が遅かったためと考えられる。
・したがって、バッチ量が多い方が生焼けとなる。
さらに、この経験を端的に要約すると次の知見となります。
【焙煎機に最適なバッチ量が存在する】
【測定されるBTsだけでは説明できない事象が存在し、BTiの違いによるものと推定される】
【同じ生豆・同じ条件で1ハゼのタイミングが異なる場合は、BTiが異なることを示している】
【1ハゼのタイミングは、測定不能の値であるBTiの指標となる】
<暖気時間の違い>
全く同じ豆を同じ環境で焙煎しましたが、1ハゼのタイミングが異なる結果となりました。違いは暖気運転の時間です。
1バッチ目は、十分な暖気を行い、十分に焙煎機に蓄熱されたと思われるタイミングで焙煎しました。
2バッチ目は、(急いでいたので)1バッチ目が終了したのち、さほど暖気することなく、すぐに焙煎を開始しました。
両者ともグラフの形状はほぼ同様でしたが、2バッチ目の1ハゼのタイミングが若干遅れました。
カップの違いは、両者の比較でやっとわかる程度の微妙なものでしたが、
1バッチ目は、ネガティブのない良い風味でしたが立体感がなく単調な風味と感じられました。
2バッチ目は、マウスフィールに若干の違和感を感じ取れましたが、風味にコンプレックスがあり、厚みのある風味となりました。
上記のことが示すのは次の通りです。
・焙煎機の予熱時間がBTiに反映される
・BTs≒BTiだとクリーンであるが風味が単調に、BTs>BTiだとネガティブも増えるが風味は複雑になる
この経験から得られる知見は次の通り
【予熱時間を適度に取らないと安定した焙煎はできない】
【BTs≒BTiが必ずしも良いとはいえない。BTs>BTiの程度次第では素晴らしいカップとなる可能性がある】
★★ 三次元焙煎理論 3D Roasting Method ★★
焙煎機の温度計、またはPCに表示される豆の温度は、豆の表面温度(BTs)である。これまではBTsと時間(T)の関係(二次元)しか考慮してこなかったが、豆の内部温度(BTi)を考慮する(三次元化する)ことによって、カップクオリティの向上が期待できる。
①BTiを可能な限りBTsに近づけることでクリーンなカップとすることが可能である
②意図的にBTsとBTiに差をつけることによって複雑さ(complexity)を表現することも可能である
③ただし、BTs>>>BTiの場合はカップに悪影響が生じる
まずは、③とならないような工夫が必要であり、次に①を目指すべきであろう。意図的に②ができたらスーパーである。
②の実現のためのコントロール方法として適しているのは、バッチ量か投入温度のコントロールが良いかもしれない。
また1ハゼのタイミングは、BTsとBTiの違いを示す指標となり得るため、非常に重要である。
不安定な予熱時間は、BTiの不安定化を引き起こすため、注意が必要である。

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