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KURIYA COFFEE ROASTERS BLOG

焙煎に関する独り言(長文)

同じ味を再現できない焙煎は、プロの仕事ではない。原因とそれに伴う結果を理解し、コントロールできないと、それ以上の進歩もない。

・・・と私は考えているので、焙煎に関しては可能な限りデータ化を進めているわけです。

さて、今回記載するのは、焙煎の温度変化の不確定要素をどのように排除するか、という話。

焙煎機を予熱したのち、ある一定温度まで温度を下げてから、生豆を投入する。この時の温度を投入温度と言います。

生豆を投入すると、焙煎機内部の温度に比較して冷たい物質である生豆により、豆温度計の数値は下がり続け、ある点で極小となる。この点を中点(T.P.)といい、その時の温度を中点温度といいます。

ちなみに豆の温度を測定している温度計(熱電対センサー)が測定しているのは、センサー周囲の温度とセンサーに接触する豆の温度が平衡に近づこうとしている際の雰囲気温度を測っています。少なくとも生豆投入から中点までは。中点を過ぎると温度計の表示する温度は、豆の温度に限りなく近づいていく(としておこう)。

さて、この中点温度が常に一定にならないと、その後の焙煎プロファイル(グラフ)は右に行ったり左に行ったりして、ぜんぜん前回のプロファイルを再現できないのです。それに伴う風味の変化も保証できないわけで、中点温度の一定化は非常に重要です。そして困ったことに、変動はしばしば発生し、その原因が、私には原因がわからないのでした。

それでは困るので、色々な取り組みをしました。

まずは、生豆自体の温度を一定化することにしました。温度管理のできるワインセラーに一晩保管してから焙煎する方法です。これで投入時の生豆の温度はほぼ一定にできるはずです。それでもTPは一定化しませんでした。

次に豆温度計の他に焙煎機ドラム内の温度(ET)を測定するために温度計を設置しました。投入時のETを常に一定化するよう心がけて焙煎を行いましたが、だいぶマシにはなったのですが、それでもTPは一定化しません。

そこで、きっと室内の湿度の影響ではないかと考えました。「季節によって、湿度によって焙煎の具合が変わるものだ・・・」というのはよく聞く話だし、なんとなく説得力がある気がして。

そこで、常に焙煎時の湿度と室温を記録するようにしました。ところが、結局あまり傾向が掴めないのでした。

ある方に相談したら、「生豆投入に至る所作は果たして一定だろうか?」というアイディアをいただきました。なるほど予熱のかけ方やそこからの冷却方法、投入時のシューターの操作・・・言われてみればそこまでこだわってはいませんでした。そこで、バッターボックスに入る時のイチローのように決まった手順で操作を行うようこだわってみました。

それでも、イマイチな結果でした。

そんなある時、投入時に火力をいつもより強めで投入してしまったのです。「失敗した!」と思ったのですが、TPはさほど高い温度にならず許容範囲に落ち着いたのでした。

私の焙煎は、焙煎の初期に多くのエネルギーを豆に与える方法を取っています。そのためには、その際のグラフの勾配が急にならなければならない・・・つまり温度上昇率が高くならなくてはいけません。そのためにはTPは可能な限り低い温度の方が都合が良いのです。ということで、生豆投入の際には火力を極力下げていたわけです。

ところが、投入時の火力をある程度あげても差し支えないということが偶然にも判明しました。

このことは焙煎初期の温度勾配を急にすることに寄与し、結果的に思い描くプロファイルが描けるようになりました。そして偶然にも中点温度もほぼ一定となったのです!

そこで、やっと理解しました。

ガス圧を下げすぎると、ガスの圧力計の指す目盛りの信頼性が怪しくなります・・・一定の目盛りであってもガスの量自体が不安定化していることが考えられます。特に当店の場合は都市ガスなので、気温や気圧によって、もしくは他の要因でも、多少の変動があるのでしょう。(あくまで圧力の低い状態での変動の話です)

つまり、与える熱量を安定化するためには、ある程度のガス圧が必要だったのです。

随分長いことかかりましたが、やっと課題の一つが解決できた気がします。そしてそれに伴い、焙煎の再現性を高めただけではなく、プロファイルコントロールにも寄与し、これまでできなかった風味の実現が可能となりました。

しかし、別の問題も明らかとなりました。私の焙煎は焙煎の後期にガス圧を極小にしているのですが、その時の熱量も実は不安定で、風味に影響を与えているのではないだろうか???という問題。

はぁ、いつまでたっても課題は無くならないものです。


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